1969年から1978年まで製造された初代S30型のフェアレディZ。
ロングノーズ+ショートデッキのスタイルは多くの人を魅了しました。
この頃のZを知らない方でも、ひとめ見れば、存在感のある姿に目を奪われる事でしょう。
スタイリッシュなボディは北米市場を意識したもので、日本だけではなくアメリカでも爆発的にヒットしました。
両国でのトップグレードは下記の通りです。(カッコ内は搭載エンジン)
●日本Z432(2L DOHC)
●アメリカ240Z(2.4L OHC)
日本で生産されたS30型のまとめ
「Z432」
発売は1969年10月。
スカイラインGT-Rと同じ「S20型DOHC」のエンジンを搭載していた事で注目を集めました。
当時のトップレベルのエンジンだった為、スポーツカーマニア達にとっては夢の車だったでしょう。
「432」のネーミングは、4バルブ、3ソレックスキャブ、2カムシャフトの意味が込められています。
ネットで検索すると生産台数は420台となっていますが、1995年に発行された雑誌には470台と記載されており、どちらが真実なのか気になります。
フェアレディZ432(PS30型)1970年式
引用:Nostalgic Hero/VOL45
●全長4115mm●全幅1630mm●全高1290mm●ホイールベース2305mm●トレッド前/後1355/1345mm●最低地上高165mm●車両重量1040kg●乗車定員2名●最高速度210km/h●0→400m加速15.8秒●登坂能力sinθ0.420●最小回転半径4.8m●エンジン型式S20型●エンジン種類水冷直列6気筒DOHC●総排気量1989cc●ボア×ストローク82.0×62.8mm●圧縮比9.5:1●最高出力160ps/7000rpm●最大トルク18.0kg-m/5600rpm●変速比1速2.957/2速1.858/3速1.311/4速1.000/5速0.852/後退2.922●最終減速比4.444●サスペンション前後ともストラット・コイル●ブレーキ前/後ディスク/ドラム●タイヤ前後とも6.95H14-4PR●発売当時価格160万円
「Z432R」
Z432をベースにレース出場を前提としたZです。
Z432との違いは、外観で見ると、ボディの塗装がレーシングオレンジでボンネットは艶消しブラックのFRP製です。
さらに軽量化の為に、サイドとリアのウインドウはアクリル製、フェンダーやドアは標準よりも薄い鉄板を使用していたようです。
現存台数はかなり少なく10台程度といわれています。
その為「幻のZ432R」と呼ばれるようになりました。
フェアレディZ432R(PS30SB型)1972年式
引用:Nostalgic Hero/VOL84
●全長4115mm●全幅1630mm●全高1290mm●ホイールベース2305mm●トレッド前/後1355/1345mm●最低地上高165mm●車両重量960kg●乗車定員2名●最高速度210km/h●0→400m加速15.8秒●登坂能力tanθ0.462●最小回転半径4.8m●エンジン型式S20型●エンジン種類水冷直列6気筒DOHC●総排気量1989cc●ボア×ストローク82.0×62.8mm●圧縮比9.5:1●最高出力160ps/7000rpm●最大トルク18.0kg-m/5600rpm●変速比1速2.957/2速1.858/3速1.311/4速1.000/5速0.852/後退2.922●最終減速比4.444●サスペンション前後ともストラット・コイル●ブレーキ前/後ディスク/ドラム●タイヤ前後とも6.95-14-4PR●発売当時価格150万円
「S30」
グレードは「Z」と「ZL」があります。
「Z」は廉価版で、4速MT。
「Z-L」は5速MTで助手席フットレストやリクライニングシートが装備されています。
フェアレディZ(S30型)
引用できる資料がなかった為、分かる範囲でのスペックとなります。
●全長4305mm●全幅1690mm●全高1285mm●ホイールベース2305mm●トレッド前/後1355/1345mm●車両重量1005kg●乗車定員2名●エンジン型式L20型●エンジン種類水冷直列6気筒OHC●総排気量1989cc●最高出力130ps/6000rpm●最大トルク17.5kg-m/5600rpm●サスペンション前後ともストラット・コイル●ブレーキ前/後ディスク/ドラム●発売当時価格Z/ZL84万円/105万円
「240Z」
1971年に発売された、L24型エンジンを搭載したモデルです。
「240Z」「240Z-L」「240Z-G」があり、「240Z-G」にはGノーズとオーバーフェンダーが取付けられており、S30型の中でも人気モデルとなっています。
その為、「ZG仕様」としてパーツを後付けしたZが存在します。
フェアレディZ240ZG(HS30H型)1971年式
引用:Nostalgic Hero/VOL45
●全長4305mm●全幅1690mm●全高1285mm●ホイールベース2305mm●トレッド前/後1355/1345mm●最低地上高160mm●車両重量1010kg●乗車定員2名●最高速度210km/h●0→400m加速15.8秒●登坂能力tanθ0.467●最小回転半径4.8m●エンジン型式L24型●エンジン種類水冷直列6気筒OHC●総排気量2393cc●ボア×ストローク83.0×73.7mm●圧縮比8.8:1●最高出力150ps/5600rpm●最大トルク21.0kg-m/4800rpm●変速比1速2.957/2速1.858/3速1.311/4速1.000/5速0.852/後退2.922●最終減速比3.900●サスペンション前後ともストラット・コイル●ブレーキ前/後ディスク/ドラム●タイヤ前後とも175HR14●発売当時価格150万円
「GS30」
1974年に追加された2by2モデルのZです。
全長を300mm、車高を100mm拡張し実現しました。
しかし、重たく感じるシルエットと受け取られたのか、販売台数は伸びなかったようです。
それでも4人で乗れるのは大きなメリットですね。
フェアレディZ-L 2by2(GS30型)1974年式
引用:Nostalgic Hero/VOL45
●全長4425mm●全幅1690mm●全高1290mm●ホイールベース2605mm●トレッド前/後1355/1345mm●最低地上高155mm●車両重量1145kg●乗車定員4名●最高速度190km/h●登坂能力tanθ0.48●最小回転半径5.1m●エンジン型式L20型●エンジン種類水冷直列6気筒OHC●総排気量1998cc●ボア×ストローク78.0×69.7mm●圧縮比8.6:1●最高出力125ps/6000rpm●最大トルク17.0kg-m/4400rpm●変速比1速3.321/2速2.077/3速1.308/4速1.000/5速0.864/後退3.382●最終減速比3.900●サスペンション前後ともストラット・コイル●ブレーキ前/後ディスク/ドラム●タイヤ前後とも6.45H-14●発売当時価格152.3万円
「A-S30」
型式の頭に「A」がつくように。
キャブレターからインジェクションへ変更となり、触媒がつけられました。
「C-S31」
1976年に排出ガス規制の施行があり、排気ガス還流装置等が装備され、型式が変更となりました。
クラシックカーの魅力
S30型のZはクラッシックカーに分類されます。
古い車に対する難点はたくさんありますが、クラシックカーが好きな方は、その難点が魅力となっています。
難点が魅力だなんて不思議だと感じるのではないかと思ったので、その魅力をまとめました。
個性的なデザイン
美しい曲線や独自のスタイリングの車が多くあります。
その個性的なデザインは、圧倒的な存在感でひと際目をひきます。
運転の楽しさ
運転は一筋縄ではいかない事が多々あります。
アイドリングが不安定だったり、ハンドルが重たかったりと片手でハンドルを握って優雅に運転はできません。
エンジン音を聞きながら回転数が下がってきたら少しアクセル踏んでエンストしない様にしたり、重たいハンドルは停止状態だと動かないので少しずつ動きながら力業でハンドルを回します。
でもその分、自分で運転している感覚があるので楽しいのです。
メンテナンス
日々のメンテナンスはとても重要になってきます。
新品の車両と同じようにディーラー任せにはできません。
自分で手を加えたり、専門家と協力して修復したりします。
部品探しに翻弄したり、無ければ製作したりします。
とても大変ですが、やり遂げたあとは達成感があり愛着も増します。
夢をかなえる
クラシックカーに乗っている方の多くは、昔からずっと乗っているか、昔から憧れていてやっと手に入れた、という方が多いと感じます。
何十年も連れ添った車は相棒のようなもので、何十年越しに手に入れた車は夢を実現した証です。
クラシックカーに特別な想いがある方たちは、その車を簡単に手放す事はありません。
高額で買い取ると言われても断るでしょう。
それよりも大事にのってくれる次のパートナーを探しているのです。
オーナー達がそれほどにも愛情を注ぐ車は、もはやただの車とは思えません。
魂が乗り移ってもおかしくはないのではと思うほどです。
これほどの魅力を持つクラシックカーを、今後も素敵なオーナー達によって受け継がれていく事を願うばかりです。
クラシックカーが欲しい
クラシックカーに乗るなら自分で整備が出来ないとダメだとよく聞きます。
しかし、結論から言えば、乗れます。
ただ、購入時にしっかりメンテされているものを選ぶ事が大事です。
購入後もそのお店が整備をしてくれれば問題ないですが、販売のみのところもあると思います。
その為にもクラシックカーの整備が可能なショップを見つける事が重要になります。
信頼できるショップがあれば、自分でメンテ出来なくても問題ありません。
でも、出来れば多少の知識はあると安心です。
古い車なので、いつ故障してもおかしくありません。
窓が開かない、ドアロックがかからない、異音がする、などなど不具合がでてきます。
その都度、原因を調べていると、嫌でも多少の知識は身に付きますし、同じような車に乗っている方から情報をもらえたりします。
もちろん分らなくても問題はありません。
自分で調べてもわからない場合はプロの整備士さんにお任せすれば安心です。
しかし、それでも購入するには覚悟は必要になります。
今はクラシックカーの相場が高くなっています。
今後、上がるか下がるか全く見当がつきませんが、現状ではかなりの価格がすると思います。
自働車税も高いです。
新車登録をして13年を経過すると、環境負荷が大きいという理由で税額がアップしてしまいます。
長く大事に乗っているのに酷い話です。
走行中にエンストする事もあります。
「今、エンジン止まった?」と気づいて、惰性で走りながら慌ててセルを回すなんて事もあります。
これだけ大変な事があると知っても、欲しい気持ちが変わらなければ是非乗っていただきたいです。
購入の際に下記の記事が参考になれば幸いです。
何の車にする?
見た目で選ぶ方が一番多いと思いますが、部品の多さが重要になります。
故障した際に部品がなければ修理できませんし、ワンオフとなるとかなり金額がかかります。
(ワンオフ:オーダーメイドの部品のこと)
「ヤフオク」や「亀有エンジンワークス」等で自分が欲しい車の部品があるかを調べてみましょう。
どこで買う?
ひとつのショップだけではなく、いろいろなショップに行って見てみましょう。
ボンネットやドアを開けてとにかく隅々まで見ましょう。
と、いってもどこを見れば良いのかわからないのが本音です。
なので、いろいろな販売店に何度も足を運んで説明をしてもらいましょう。
価格の相場や、その車の錆のでやすい箇所がわかったりします。
一目ぼれした車があったとしてもすぐに購入せずに、他の販売店でも探してから決めた方が良いと思います。
購入後にメンテをしてくれるショップなどはどうやって探す?
ディーラーで整備をしてくれるところは、ほぼ無いのではと思います。
私もディーラーに尋ねた事がありますが「整備できる整備士がいない」と、断られてしまいました。
個人のショップも良い悪いが分かれるようなので注意が必要です。
一番よいのはクラシックカーに乗っているオーナーさんに聞く事です。
私もクラシックカーのオーナーさんを紹介してもらって、さらにその方に整備士さんを紹介していただきました。
周りにそのような方がいない場合の方が多いと思うので、SNSを活用して情報を収集するのもいい手だと思います。
どんどん乗ろう
苦労して手に入れた車なので大切にしたいと思いますが、ぜひ沢山乗ってほしいです。
しっかりメンテすれば遠出も出来ます。
車内に風が入ればカビを防ぐ事ができますし、日々乗っていれば故障個所も見つけやすくなります。
道の真ん中で止まることもあるかもしれないし、大変な事も起こると思いますが、どんどん乗って楽しんで欲しいです。
購入したら
無事に購入することが出来たら、まずは保管場所です。
おすすめ順に記載します。
ガレージ保管
メリット
- 外部の環境から保護し、天候や紫外線からまもります。
- 温度と湿度をコントロールしやすいので、錆の発生を抑え、コンディションを良好に保つことができます。
- 盗難や破損からのリスクを最小限に抑えることができます。
デメリット
- ガレージ設置のスペースの確保が必要で、コストがかかります。
- ガレージ内の空気が停滞しやすいため、定期的な換気が必要です。
カーカバーを使用した保管
メリット
- 低コストで入手でき、取り付けも簡単です。
- 塗装を雨や紫外線から保護し、汚れや小さな傷から守ります。
デメリット
- 長期間使用には向いておらず、劣化し破れるので定期的に買いえる必要があります。
- カバー装着時に車の表面が汚れていたら塗装を傷つけてしまいます。
- 強風や突風がある場合には、カバーが飛ばされたり煽られる音がうるさい事があります。
屋外保管
メリット
- コストが低く抑えられます。
- 風通しが良く、湿度が調整されることがあります。
- 乗りたい時に、すぐに乗れます。
デメリット
- 天候からの影響を受けやすく、塗装や内装に悪影響を及ぼします。
- 長期間の屋外保管は、劣化や腐食の進行を加速させます。
- 盗難や破損のリスクが高まります。
以上のことから、ガレージ保管が良いですが、ガレージのない方がほとんどだと思います。
ですので、1番現実的なのは「カーカバー」になります。
地面は土ではない場所でカバーをかけましょう。
地面が土だと湿気が下から上がってきて、錆を発生、進行させてしまいます。
そして、盗難防止用グッズで車を守りましょう。
盗難が一番怖いです。
下記に盗難防止方法をまとめたので参考にしていただければと思います。
盗難防止グッズ
ステアリングホイールロック
強度と耐久性のある物を選ぶと良いです。
タイヤロック
こちらも強度と耐久性のある物が良いです。
切断に手間がかかる物は嫌がられ、ターゲットにされづらくなります。
アラームシステムの取り付け
家の敷地内に保管できる場合に有効な方法です。
保管場所が遠いと、駆け付けても間に合わないかもしれません。
GPSトラッキングシステム
車両の位置をリアルタイムで追跡できます。
防犯システムの看板
防犯カメラやセキュリティシステムの看板を目立つ場所に掲示すると、盗難者を威嚇できます。
盗難されてしまうと見つけるのはなかなか難しいと聞きます。
上記に紹介したグッズの他にも、たくさんの盗難防止グッズがあります。
まずはターゲットにされないようにすることが大事です。
グーグルマップに車が映り込んで特定されることもあるようなので、やはりカバーをかけて目立たない様にすることが必要でしょう。
昔の車なので、車に詳しい人なら鍵がなくても簡単にエンジンをかけることができると思います。
エンジンがかかってもハンドルやタイヤが回らなければ動かせません。
個人的にはタイヤロックとステアリングホイールロックの取り付けをお勧めいたします。
出来ればアラームシステムもあれば盗難者は逃げるのではないかと思います。
何もしなければターゲットにされてしまいます。
大切な車を守る為に、出来る限りのことはしましょう。
走行中に故障したらどうする
クラシックカーは1975年頃までに生産された車を指します。
製造から50年以上経っている場合が多いでしょう。
その為、走行中に止まる事も考えられます。
そんな時でも慌てずに対処できるように心構えが必要です。
安全確保
出来るだけ車や人の邪魔にならない場所に停車する。
それが難しければハザードをたいて、三角表示板を設置しましょう。
原因の特定
できる範囲で良いので壊れた原因を考えましょう。
どんな症状が出たか、異音はしないかなどを考えます。
おかしいと思った箇所を写真や動画で保存しておくと修理の際に役に立ちます。
救援の依頼
おそらく自走できない状態なので、レッカーなどの要請が必要になると思います。
加入している保険会社によっては、保険内容にロードサービスが含まれている場合があるので、そちらから依頼しても良いでしょう。
行きつけの整備工場やJAFなどのロードサービスへ依頼しても構いません。
そのあと安全な場所へ避難して到着を待ちます。
何か起こっても冷静に対処できるように、日ごろから意識をしていれば大丈夫です。
そして、こまめにメンテナンスをする事で防ぐことが出来るので、少しでもおかしいと思った箇所は早めに修理していくと良いでしょう。
まとめ
クラシックカーの大変なことから魅力まで書きましたが、まだほんの一握りのことしかお話できていないと思います。
壊れる、錆びる、エンジン音は大きい、室内は排気ガスくさい、エアコンが付いてないから夏は乗れない…
あげるとキリがありません。
だけど公道を元気に走っています。
オーナーさん達は、ただ好きだから乗っているだけです。
そんな方たちが20年後、30年後も同じ車に乗り続けていられたらと思っています。